市立図書館の科学書コーナーで見つけました。控え目な背表紙が並ぶ中、ひときわ目立つポップ・アートな装丁に目が止まりました。タイトルは「恋する天才科学者」。ぱらぱらとめくると、歴史的な科学者たちの一般向け伝記のようでした。こうした伝記物は大好物ですし、このところ読書は専ら息抜きのためにしているようなものなので、さっそく借りて読んでみました。タイトルからも連想できるとおり、科学者たちの恋愛を中心としたウラ話満載の、興味深い良書でした。著者の女性的な筆はこびが印象にのこりました。この内田女史、時に「科学史ガール」、時に「単なるミーハー」に為り変わり、痛快に科学者たちの知らざれる過去を暴いて行きます。E.シュレーディンガーの章は衝撃的でちょっとひいたりしました。W.ハイゼンベルクの方が余程まともではありませんか。個人的な印象(思い込み)とは全く違うのがおもしろかったです。N.ボーアは期待通りの人物像でほっとしました。大学院生の頃だったと思いますが、ボーアの著書のあまりの難解さに己の頭の悪さを恨み愕然とした記憶がありますが、彼は説明が上手い人物ではなかったという事実(?)をこの本で知り、納得したような、安堵したような気持ちになりました。W.パウリが相対性理論の解説を残していたとは知りませんでした。排他原理の一発屋(失礼。これだけでもすごいことです)だと思っていたのですが印象が改まりました。日本人では南方熊楠が取り上げられていました。天皇陛下に献上した標本入りのキャラメル箱、彼の人物象の描写には欠かせない逸話です。R.ファインマン贔屓は研究業界には多いわけですが、著者の入れ込みようはまさに「恋する乙女」。「ファインマンさん」伝記シリーズから入ったのではなく、彼の教科書で惚れ込んだということですから、筋金入りのファインマン・ファンクラブ会員(!)ということでしょう。ニュートンやファラデー、アーベルといった近代科学者・数学者たちの章もあります。ガロアの章、結びの「1km離れて見ていたい」は思わずあははと笑いました。悲劇的なガロアの生涯は、どんな本でも鎮魂歌的になりがちですので、余計に可笑しかったです。参考文献も非常に良くできています。著者の徹底的な調べあげなくしては、ここまで楽しい本にはできなかったと思います。
この書評は、読了後1週間で思い出しながら描いていますが、まだまだ書けそうです。好印象だったのは、科学者たちの権威失墜を狙ったものではなく、彼らへの愛に満ちあふれていることです。書き方でよく分かります。敢えて難点を上げるとすると、宇宙人V.ノイマンは外せなかったかなと思います。よって、続編を希望します。
この書評は、読了後1週間で思い出しながら描いていますが、まだまだ書けそうです。好印象だったのは、科学者たちの権威失墜を狙ったものではなく、彼らへの愛に満ちあふれていることです。書き方でよく分かります。敢えて難点を上げるとすると、宇宙人V.ノイマンは外せなかったかなと思います。よって、続編を希望します。
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