往年のベストセラー。私が尊敬する某アーティストが多感なころ(高校時代?)に「二十歳の原点」とともに読んでいた作品として挙げていた。たまたま古本屋で見つけたので買って読んだ。作者の鮮烈な表現力の虜になり、時に思わず感極まった。しかし落ち着いてストーリーを反芻してみると、疑問な点が多いことに気が付く。
自死を選んだ女学生の手紙(症状、心境などを描写している)は、どのようにして主人公に郵送されたのだろう。睡眠薬をoverdoseして意識が朦朧としているはずの人間が、ポストに投函できるとは考えにくい。遺書として葬式で受け取るとか、もっと自然なプロットがあったろうに※1。あと、女性の心理描写について。実際の女性はそんなものでなはいと思うけどなぁ、と思う場面が多々あった。いくら幸せな家庭像といっても、きゅうりをせっせと洗う自分に思いをはせるかねぇ。料理が得意な女性でも「きゅうり洗うのなんて手が荒れるしメンドクセェ」と思っているはずで。作者の筆力に引き込まれぐいぐいと読み進んでしまうのですが、突如こういった冷水を浴びせくるわけです。「所詮はフィクションだ」と気が付き我にかえる。その度にとても残念な気持ちにさせられる。そして、結末。この作品が書かれた当時、女性の自立には大変な覚悟が必要な時代であった。その時代は衝撃的であったであろう結末も、現代ならむしろ自然な展開となり、小ぢんまりと終わってしまった。そもそも従兄妹どうしが親戚に勧められて婚約するのにも無理がある。インテリ家系なのに遺伝学の初歩もしらんのだろうか。
ただ、この作品、作者若干25才という若さで書き上げたことには驚嘆する。重厚で流麗な語彙、尋常でない心象表現力。詩的感性の強い作品が好きなら、おすすめ。ベストセラーになったのは時代背景の効果が大きいと感じるので、当時の若者の考え方や暮らしについて興味のある人にも※2。
思わず辛口になってしまったのは、某アーティストの影響や名作としての期待が大きかったからだろうか。個人的には併載の短編、「ロクタル管の話」の方が数段面白かった。
※1 文芸春秋の文庫版に解説があるそうだが、作中でなんとかすればいいのに、と思うのは厳しいかな。
※2 この作品のように、学生が左翼的運動や目的不明の合宿に明け暮れているようでは、親御さんによっては大学なんて行かせたくなくなるだろうな。。こういったベストセラーで大学や大学生のイメージを貶めるのは、もう勘弁してほしいと思う。少なくとも、多くの理系の大学生は、真面目で毎日一生懸命です。
自死を選んだ女学生の手紙(症状、心境などを描写している)は、どのようにして主人公に郵送されたのだろう。睡眠薬をoverdoseして意識が朦朧としているはずの人間が、ポストに投函できるとは考えにくい。遺書として葬式で受け取るとか、もっと自然なプロットがあったろうに※1。あと、女性の心理描写について。実際の女性はそんなものでなはいと思うけどなぁ、と思う場面が多々あった。いくら幸せな家庭像といっても、きゅうりをせっせと洗う自分に思いをはせるかねぇ。料理が得意な女性でも「きゅうり洗うのなんて手が荒れるしメンドクセェ」と思っているはずで。作者の筆力に引き込まれぐいぐいと読み進んでしまうのですが、突如こういった冷水を浴びせくるわけです。「所詮はフィクションだ」と気が付き我にかえる。その度にとても残念な気持ちにさせられる。そして、結末。この作品が書かれた当時、女性の自立には大変な覚悟が必要な時代であった。その時代は衝撃的であったであろう結末も、現代ならむしろ自然な展開となり、小ぢんまりと終わってしまった。そもそも従兄妹どうしが親戚に勧められて婚約するのにも無理がある。インテリ家系なのに遺伝学の初歩もしらんのだろうか。
ただ、この作品、作者若干25才という若さで書き上げたことには驚嘆する。重厚で流麗な語彙、尋常でない心象表現力。詩的感性の強い作品が好きなら、おすすめ。ベストセラーになったのは時代背景の効果が大きいと感じるので、当時の若者の考え方や暮らしについて興味のある人にも※2。
思わず辛口になってしまったのは、某アーティストの影響や名作としての期待が大きかったからだろうか。個人的には併載の短編、「ロクタル管の話」の方が数段面白かった。
※1 文芸春秋の文庫版に解説があるそうだが、作中でなんとかすればいいのに、と思うのは厳しいかな。
※2 この作品のように、学生が左翼的運動や目的不明の合宿に明け暮れているようでは、親御さんによっては大学なんて行かせたくなくなるだろうな。。こういったベストセラーで大学や大学生のイメージを貶めるのは、もう勘弁してほしいと思う。少なくとも、多くの理系の大学生は、真面目で毎日一生懸命です。
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