2009年9月10日木曜日

分子モデリング・シミュレーション考(1)

まあ、専門として当たり前のことしか書いていませんが、自分の言葉で書くこと
が重要、ということで。

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バイオインフォマティクスの一連の講義において、本"考"項は立体構造解析に分
類される。
立体構造の情報解析は静的構造解析と動的構造解析の2つの支流があり、相補的
な発展を続けている。

たんぱくや核酸が分子である以上、それらの構造を定義するのは、分子を構成す
る原子の三次元座標(x,y,z)である。
解析対象の実験値として、まず原子の座標が与えられた場合、行うべきは、分子
のモデリングである。
そして、モデリングとは対象を数式で表現することに他ならない。

 生物系の雑誌や書籍でよく使われれる、たんぱく分子のコンピュータ・グラ
フィックを見たことがあると思うが、
これは分子モデリングとは言わない。ソフトウェアでモデルを視覚化しているに
過ぎない。モデルとはあくまで数式である。

 分子モデリングには、構造のモデル化と振る舞いのモデル化の両者が必要であ
る。前者だけで済ませる場合もあるが、
振る舞いをモデル化し、その分子の性質を深く理解するには、構造のモデリング
が不可欠である。

さて、どのように数式でモデル化するか。
物理の授業ででてきたに違いない。今更隠すことはないだろう。
我々人類は、既に答えを得ている。シュレーディンガー方程式である。

シュレーディンガー方程式は、量子の振る舞いを記述する方程式である。
量子とは不連続な運動、不連続なエネルギー状態を持つ粒子のことである。
このような性質を備える粒子は、皆さんの世界では、電子が挙げられる。
分子は原子で構成されているのはご存じの通りで、原子は陽子と電子で構成され
ている。
陽子はさらに素粒子に分けられるが、分子モデリングでは、そこまで考えること
は、通常ない。

 与えられているのは、すなわち実験的に決められるのは、原子の座標である。
実は、構造のモデル化そのものは、原子の三次元座標(x,y,z)で事足りる。しか
し、多くの場合、分子の振る舞いを記述する必要がある。そして、分子の振るま
いを支配しているものは何か。むろん、原子であるが、これに加え、電子の状態
をモデル化する必要がある。シュレーディンガー方程式は、量子の振る舞いを記
述する量子力学のモデルであるが、分子を構成しているのが電子であり、また電
子は量子であるが故に、分子のモデリングに応用されているのである。シュレー
ディンガー方程式を解くことにより、その分子の様々な性質、振る舞いを理論的
に予測することができる。

 シュレーディンガー方程式を分子モデリングに応用し、さらにその方程式を数
値的に解くことを、量子化学計算と呼ぶ。電子状態計算と呼ばれることもある。

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1回で終わりそうだな。。

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