2009年11月20日金曜日

政治家と科学者の関係について

政治家と科学者の関係について。

 小泉政権下で、「聖域なき構造改革」が断行されました。これにより国立研究
所や国立大学の独法化が決まりました。科学研究に政治家がメスを入れたわけで
す。この時点で科学者たちは団結して抗議行動をするべきだったと思います。
「科学者は意外に我々政治家の介入を許し勢力削減の意向も唯唯諾諾」と思われ
たのでしょう。簡単に言うと、甘く見られ付け込まれてしまったのです。それ
が、今回の仕分け作業の結果を招いたと言えます。日本の未来を、運命を握るの
が科学技術であることは明白なのですから、科学者たちは聖域であると断じ指一本
触れさせず毅然とした対応をするべきであったと思います。
 
 「政治家は、国家を発展させることを目的とする」 これは自明だと思いま
す。国益増進に努める、それが政治家のあるべき姿だと思います(それが行き過
ぎると、国家間の過当競争、そして戦争ということになってしまうのですが、そ
こまでしての国益を日本国民は期待していません。首相が「これから、戦争しま
す」などといったら、たちまち内閣不信任案で解散決議でしょうから、少なくと
も現在の日本ではその心配はいりません)。日本という資源の無い国家の発展に
は、科学技術の推進が不可欠です。そこで、これまでの日本の政治家は科学者を
味方につけ、国力の増進に使ってきました。多かれ少なかれ摩擦はあったに違い
ないにせよ、両者の信頼関係によって成り立って来たと思います。今や、その信
頼関係は、政治家サイドから一方的に破棄され、多くの研究者たちは民主党には
不信感を頂いてしまっています。このような状況では、やがて国力が衰退するこ
とは目に見えています。

 研究者は国家の援助をあきらめ、民間の資金で研究を行うべきとの論調があり
ます。無論そのようなケースが存在して良いと思います。すでに企業と連携し成
功を収めた大学や研究所はたくさんあります。企業の場合、国家の発展よりも企
業の利益を重視します。利益の一部は税金として国庫に納められ、結果として国
家が潤いますから、国益に繋がります。これはこれで良いと思います。しかし、
それだけで良いのでしょうか。他国に伍することは無いのでしょうか。国力を維
持・増進するに必要なものは、お金だけではありません。お金では買えないもの
を作り出すのは、科学技術です。お金で買えない科学技術を、国が国家戦略とし
て欲したとき、政治家と科学者が連携する時なのだと思います。ここで重要なの
は、国民ではなく、あくまで国が必要とするものを作る、ということです。国民
が必要とするものは、企業が主体となって作ってどんどん売るべきです。国民が
必要ないと判断したからといって、国費による研究を中断するのは過剰反応で
す。国費による研究は、国家が必要としないと判断した時に、中止するべきもの
です。

 残念ながら、民主党は、国家戦略として欲する科学技術が無いのだろうと思い
ます。日本は科学技術によって発展した国家である事はさすがに知っていると思
いますので、実際は将来的な国家発展のビジョンすら持ち合わせていないのだと考えられます。
これは大きな問題です。選挙前、民主党の科学技術政策は
分かりにくく、少なくとも詳細な説明はありませんでした。きっと、その時か
ら、国家の発展に科学技術を使うという発想が無かったのでしょう(もしかした
ら、国家を発展させるという政治家の最低限の役割も放棄している可能性があり
ます)。自民党は、様々な問題を抱えていたとはいえ、科学技術無しには生きら
れない日本の特性を知って、科学者との信頼関係を築き、国家発展の基軸と
して科学研究推進を採用していた、ということになります。

 政治家の気まぐれで、科学技術の推進・遅滞をコントロールすることは、長期
的には国益に反します。
 少なくとも日本の政治家は科学研究の推進には積極的に寄与するべきであっ
て、今回の事業仕分けのように抑制的に働くことは望ましくありません。
 民主党は、国益の増進という政治家の最低限の役割を果たすべきです。その核
は科学技術以外にあり得ません。
 国益軽視・科学軽視の政党でも政権党になれるのであれば、憲法を改正するな
どルールを規定して、科学研究を聖域に戻す活動を展開する他ありません。
 

 基礎研究と応用研究という対立構造については、また。
 あと、国民へのアピール不足という意見、国民(世論)と科学者という関係に
ついても。



事業仕分けについて(1)

話題の行政刷新会議での事業仕分けについて。

 実は、私の所属プロジェクトも俎上に上げられ、多くの科学研究関連予算と同
様、要約として「縮減」という結果でした。学内関係者や所属学会から、今回の
結果について、文部科学省に意見を出すように依頼が来ました。しかし、お恥ず
かしいことに、自分での様々な立場が葛藤し、自分の意見をまとめることに難渋
しておりました。論を進めるごとに、別の立場の自分が現れ相克してしまって、
収拾がつかなくなっていたのです。

 思考がどこで縺れているのか、自分なりに考えたところ、「1人の国民として
の立場」「1人の研究者としての立場」「この事業で生活費を頂いている者の立
場」、の3つの立場があり、それぞれが葛藤していることが原因にあるようで
す。また、今までこのような事を深く考えることが無かった自分に呆れてしまっ
て、それがまた遅筆の遠因であったように思います。

 自己嫌悪はさておき、上にあげました3つの立場のうち、「この事業で生活費
を頂いている者の立場」は、至って私的な観点に起因する立場といえます。一方
で、今回の出来事を、私にとって深刻な事態にしているのも、この立場です。し
かしながら、このプロジェクトの来年度の採択がかなり厳しい状況にあります
し、また客観性を欠く要因とも成り得るので、ここでは潔く葬り去っても良いで
しょう。

 さらに立場を整理して論点を明白にして行きます。

 残る2つの立場「1人の国民としての立場」「1人の研究者としての立場」
は、どちらも軽視することができません。行政刷新会議は財務省の提案は発端で
ある様子ですが、選挙で選ばれた政権党が公認している以上、当然無視できるも
のはありません。民主主義のルールに則り、大きな影響力を持って然るべきだと
思います。よって、仕分け作業の結果も、国民の総意として、当事者は真摯に受
け止める必要があります。しかし、その結果が、本当に国民にとって良い将来を
約束するものなのかは疑問です。もし、民主党が公約を完遂するための財源を確
保することだけが目的であれば、民主党の選挙対策としか思えませんので反対で
す。一連の公約は、国民の将来を短期的な視点でしかとらえていない政策です。
科学の発展は国力の発展に直結していますが、成果の還元は長期的な視点で捉え
る必要があります。

 要するに、「即効性」をとるか「遅効性」を取るかの問題といえます。

 しかし、その2つしか選択肢が無いのだとしたら、国家の取りうる方針として
は、あまりに貧弱で心もとないと思います。そこを柔軟に考えてこそ、政治だと
私は思います。

 私は、麻生内閣の「定額給付金」の経験から「子供手当支給」の経済効果とし
ての即効性は期待できると思います。一方、科学の発展が長期的な国力の増進に
繋がることは、歴史が証明しています。例をあげると、「製鉄」「産業革命」
「兵器」「抗生物質」「エネルギー」等が該当します。より現代的な例では、IT
技術があげられます。デジタルディバイトは今や国家力の差を規定するものでも
あります。
 
 私は国粋主義ではありませんが、日本は発展し続けることの可能な数少ない国
の1つとして、今後も人類の発展を科学や文明で牽引していくべきと思います。
また、日本は資源が乏しく、科学技術分野での成功無くしては、やがて黒船に怯
える時代に後戻りしてしまうと思います。したがって、科学技術の分野で世界を
牽引していく事が合理的であることは明白です。

 しかし、民主党の考えは、「科学研究のような長期的な見返りのある政策は一
旦休止か遅らせてでも、即効性のある政策を優先したい」ということのようで
す。この一時的な休止が、後で挽回できるものか、それとも、気がついたときに
は、致命傷の遠因となるのか。

 未来がどちらに向けて進んで行くのか、多くの国民には判断材料がないと言っ
て良いでしょう。そこで、判断材料を持つ国民、すなわち科学者の意見が重要と
なるわけです。

 

2009年11月18日水曜日

Moodleでのファイル管理: ファイルサイズの上限(100Mb)の変更について

久々の更新です。
(親知らずを抜いて以来、落ち込むことが多かったけど、なんとか生きていま
す。。)

Moodleのファイル管理機能は非常に便利です。
私の場合、メールではやり取りするには大きなファイルのファイル共有にも使っ
ています。
ファイルのリストに、アップロードしたユーザの名前が出れば、他の追随は許さ
ないでしょう。

アップロード可能なファイルサイズは、2Mから100Mまで選択可能です。
100Mb以上に設定するには、下記の方法で可能です。 ちなみにOSはRHEL4です。

1. /etc/php.ini

post_max_size = 既定値
upload_max_filesize = 既定値

の既定値の値を、アップロードを許可するファイルサイズの上限に書き換えます。

post_max_size = 200M
upload_max_filesize = 200M

2. httpサービスのリスタート

/etc/init.d/httpd reload

以上で変更が反映されます。

1.のphp.iniの位置が分からない場合は、管理者アカウントでログインし、
サイト管理→サーバ→PHP情報 で表示される画面の、「Configuration File
(php.ini) Path 」で確認することができます。

お役に立てば。

まあ、自分のためのメモでもあるのですが。